日本政策金融公庫の創業計画書は、全国共通の1枚の様式です。項目数は多くありませんが、そのぶん1つの欄に書ける分量が限られ、何を選んで書くかで印象が大きく変わります。 ここでは架空の事業者の計画書を、5つのステップに分けて順番に埋めていきます。
例に使う事業者
アオゾラ珈琲焙煎所(架空)
大手コーヒーチェーンで8年間働いた個人が独立し、自家焙煎の豆の販売と小さな喫茶スペースを兼ねた店を開く、という設定です。
1. 事業計画
最初の2欄は「なぜやるのか」と「あなたは誰なのか」です。事業の説明より前に、人物の欄が来ていることに意味があります。

- 創業の動機
- 前職で焙煎とロースター管理を担当し、豆の状態で味が決まることを実感しました。地元には自家焙煎の店がなく、勤務先の顧客からも「近所で買えないか」と繰り返し聞かれたため、独立を決めました。
- 経営者の略歴(1)
- 2018年4月〜2026年3月 株式会社◯◯コーヒー 焙煎部門 店舗2店の焙煎・仕入を担当
- 経営者の略歴(2)
- 2024年4月〜2026年3月 同社 店長 売上月480万円・アルバイト9名のシフトと発注を管理
- 取得資格
- コーヒーマイスター(2021年)/食品衛生責任者(2026年)
よくある書き方
昔からコーヒーが好きで、自分の店を持つのが夢でした。美味しいコーヒーを多くの人に届けたいと思っています。
伝わる書き方
前職で焙煎とロースター管理を担当し、豆の状態で味が決まることを実感しました。地元には自家焙煎の店がなく、勤務先の顧客からも「近所で買えないか」と繰り返し聞かれたため、独立を決めました。
融資審査のポイント
弱い方は、読んでも書いた人が誰なのか分かりません。融資の相談では「何をするのか」より「あなたは誰なのか」が先に問われます。担当者は、その計画を実行できる人かどうかを略歴から推し量ります。強い方は、動機が個人の好みではなく前職での経験と客からの要望に紐づいていて、略歴の欄と話がつながっています。年数・店舗数・売上・人数といった数字が入っているのは、盛るためではなく、確かめられる形にするためです。
2. 取引計画
売る相手と仕入れる相手、そして回収と支払いのタイミングを書きます。金額ではなく、資金が入るまでの時間を見るための欄です。

- 販売先:一般個人(店頭)
- 売上構成比 70%/回収 即金
- 販売先:△△ベーカリー(卸)
- 売上構成比 30%/回収 翌月末
- 仕入先:◯◯生豆商会
- 仕入構成比 85%/支払 翌月末
- 人件費の支払
- 毎月25日/アルバイト2名
融資審査のポイント
卸の入金は翌月末ですが、人件費は毎月25日に出ていきます。帳簿の上で黒字でも、その差の分だけ現金を先に用意しておく必要があります。この欄は、その時間差がどれくらいあるかを見るためのものです。店頭の即金比率が高い商売は、そこが強みとして読まれます。卸先がある場合は、口約束の段階か、すでに取引が決まっているのかを正直に書きます。決まっていない見込みを確定のように書くと、後で必ず食い違います。
3. 資金計画
この欄は左右で必ず金額が一致します。左に「何にいくら使うか」、右に「そのお金をどこから持ってくるか」を書きます。

- 焙煎機(5kg/中古)2,400,000円
- 内装工事・什器3,100,000円
左(使いみち)と右(調達)の合計は必ず一致します ・ 7,000,000円
よくある書き方
設備資金 550万円/運転資金 150万円
伝わる書き方
焙煎機(5kg/中古・△△製作所)240万円、内装工事・什器 310万円、仕入・家賃・人件費3か月分 150万円
融資審査のポイント
左右の合計が合っていない計画書は、それだけで一度差し戻されます。金額の内訳も同じで、「設備資金550万円」だけでは何を買うのか分からず、見積書と照らし合わせられません。品目・数量・新品か中古かまで書いてあると、担当者は見積書と突き合わせるだけで済みます。自己資金の額もよく見られます。どれだけ準備してきたかが、そのまま計画への本気度として読まれるためです。
4. 損益計画
創業当初と軌道に乗った後の2つの時点を書きます。埋めるのは金額ですが、審査で見られるのは金額の根拠です。

- 売上高(創業当初・月)
- 1,225,200円
- 売上原価(創業当初・月)
- 437,000円
- 人件費・家賃・その他経費(創業当初・月)
- 652,000円
- 売上高(軌道に乗った後・月)
- 1,850,000円
- 利益(軌道に乗った後・月)
- 426,000円
- 売上の根拠
- 豆の販売:1袋1,400円 × 1日18袋 × 25日=630,000円/喫茶:客単価620円 × 1日32人 × 30日=595,200円(合計 1,225,200円)
融資審査のポイント
売上の欄に金額だけが入っている計画書は、担当者からすると確かめようがありません。単価と数量に分けて書いてあれば、その数字が妥当かどうかを一緒に検討できます。「1日18袋」が多いか少ないかは、前職の実績や近隣店舗の様子と並べれば判断できるからです。あわせて、返済が始まった後に手元が回るかどうかもこの欄から読まれます。利益が返済額を下回る計画は、その時点で通りません。
5. 返済計画
借りたお金を、いつ・いくらずつ・何で返すのかを書きます。審査でいちばん重く見られるのは、返済額を利益で無理なくまかなえるかどうかです。

- 融資額(元金)
- 4,000,000円
- 返済期間
- 7年(84回)・うち据置6か月
- 返済方法
- 元金均等返済
- 毎月の返済額(元金返済開始後)
- 約58,000円
- 年間返済額(軌道後・平年)
- 約696,000円
- 返済原資(軌道後の年間利益)
- 5,112,000円
融資審査のポイント
返済は利益から行うので、担当者は年間の返済額と事業の利益を並べて見ます。この例では平年の返済額が約70万円に対し、軌道に乗った後の年間利益は約510万円あり、利益の範囲で十分に返せる形になっています。据置期間は、売上がまだ立ち上がらない開業直後の負担を軽くするためのもので、長く取るほど後の返済が重くなります。借入額を必要な分に絞り、返済期間を利益の出方に合わせておくと、途中で資金が詰まる心配が小さくなります。黒字でも返済額が利益を上回る計画は、現金が回らないためこの時点で通りません。
STEP 1 / 5
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項目ごとの解説を見ながら入力し、Excel で出力できます。