創業計画書の書き方|5つのまとまりで考えれば、どの様式でも迷わない
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ユアトリー編集部融資の審査実務の経験者が監修しています
この記事の結論
- 創業計画書は、どんな様式においても「事業・取引・資金・損益・返済」の5つのポイントを押さえるとよく整理できます。
- 相談している金融機関で所定の様式があるなら、まずそれを使いましょう。追加で作成する資料は所定の様式で書ききれない補足として添えます。
- 審査で見られるのは数字そのものより「その数字の根拠を、自分の言葉で説明できるか」です。コンサルや税理士に丸投げしても意味がないのはこのためです。
創業融資を申し込むとき、必ず提出を求められるのが創業計画書です。
「何から書けばいいのか分からない」「予想どおりにいくはずがないのに、計画に意味があるのか」と感じる人は少なくありません。この記事では、どの様式にも共通する考え方として、創業計画書を5つのまとまりに分けて整理する方法とその意味を、融資審査の経験をもとに解説します。
創業計画書は「何のために」出すのか
金融機関は数字を見たいのではない
金融機関があなたに創業計画書の提出を求めるのは、そこに書かれた数字を見たいからではありません。その数字を土台に、あなたと話がしたいからです。
担当者は計画書を読みながら、「この売上はどう計算したのか」「この設備は本当に必要か」「これまで経験で本当にこの事業を回せるか」を確かめていきます。そのとき問われるのは、数字が正しいかどうかより、その数字の根拠を、書いた本人が説明できるかです。
人に作ってもらった計画書は、面談で崩れる
計画書の作成を誰かに丸ごと任せ、中身を理解しないまま提出すると何が起こるのでしょうか? 面談で質問に答えられず、かえって評価を下げます(このケースが多くて何度も残念な気持ちになりました)。手伝ってもらうのは構いませんが、最後に説明するのはあなた自身だということを忘れないようにしましょう。
作る過程そのものに価値がある
創業計画書を作ると、頭の中が驚くほど整理されます。売上は「客単価×客数」に分解され、必要なお金は固定費と変動費に分解され、固定費は更に家賃・人件費・通信費などに分解されます。融資のためだけでなく、事業を始める前に自分の考えを点検する道具として計画書が役に立ちます。
まずは定型の様式を使う
相談先ごとに、決まった様式がある
創業融資の相談先には、それぞれ定型の創業計画書があります。
| 相談先 | 様式 | 特徴 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫(日本公庫) | 創業計画書(沖縄以外の都道府県で共通) | 1枚の様式に9つの項目。業種別の記入例が公式サイトにある |
| 沖縄振興開発金融公庫(沖縄公庫) | 沖縄公庫の創業計画書 | 業種別の記入例(7業種)と、作成のポイントの解説動画が公式サイトにある |
| 民間金融機関の創業融資(保証協会付き) | 金融機関・保証協会毎の様式 | 商工会・商工会議所などで作成の指導を受けて作る |
相談先に定型の様式があるなら、まずはそれを使いましょう。担当者は毎日その様式を見ているので、どこに何が書いてあるかをすぐに読み取れます。独自のフォーマットで作った資料は、様式に書ききれない補足(商品の写真、店舗の図面、詳しい売上計算など)として添えるのが効果的です。
様式ごとの書き方は、それぞれの記事で1欄ずつ解説しています。
どの様式を使えばいいか
沖縄県外で創業するなら、日本公庫の様式です。沖縄県内で創業するなら、沖縄公庫か、県の制度(銀行・信用金庫の保証協会付き融資)のどちらかになります。どちらに相談するかは、沖縄公庫の創業融資の記事で比べています。
5つのまとまりで考える
様式によって欄の名前や並び順は違いますが、書く中身は、次の5つのまとまりに整理できます。
| まとまり | 答える問い | 日本公庫の様式でいうと |
|---|---|---|
| 1. 事業計画 | あなたは誰で、何を、なぜやるのか | 創業の動機/経営者の略歴/取扱商品・サービス/従業員/関連企業 |
| 2. 取引計画 | 誰に売り、誰から買い、お金はいつ動くのか | 取引先・取引関係等 |
| 3. 資金計画 | 何にいくら使い、そのお金をどこから用意するのか | 必要な資金と調達方法/お借入の状況 |
| 4. 損益計画 | どれだけ売れて、いくら残るのか | 事業の見通し(月平均) |
| 5. 返済計画 | 借りたお金を、何で、無理なく返せるのか | 様式に独立した欄はないが、審査調書では計算されている |
この順番には意味があります。人物と事業の中身が分からないと、取引も数字も評価できないからです。順に見ていきましょう。
1. 事業計画|「あなたは誰か」を最初に伝える
日本公庫の様式で、事業の説明より先に「創業の動機」と「経営者の略歴」が来ているのは偶然ではありません。融資の相談では、何をするかより先に、あなたが誰なのかが問われます。担当者は、その計画を実行できる人かどうかを、略歴に記載された「経験」から推し量ります。
- 動機は「好きだから」で終わらせず、前職の経験や、実際に聞いたお客さんの声とつなげる
- 略歴には、年数・担当業務・売上・人数など、確かめられる数字を入れる
- 動機・略歴・商品の3つが、一つの話としてつながっているかを確かめる
面談では、何を売るのか、いつから創業を考えていたのか、なぜこの事業なのか、なぜこの場所なのか、お客さん・取引先・従業員は誰か、どうやって稼ぐのか、といった5W1Hが深く掘り下げられます。事業計画のまとまりは、その答えをあらかじめ書いておく場所だと考えてください。
2. 取引計画|お金が入るまでの「時間」を書く
売る相手と仕入れる相手、そして代金を受け取るタイミングと支払うタイミングを書きます。
ここで見られているのは金額より時間です。たとえば卸先からの入金が翌月末で、人件費は毎月25日に出ていくなら、その差の分だけ手元のお金が先に出ていきます。帳簿の上で黒字でも、お金が足りなくなるのはこのためです。
- 店頭で現金・即日入金の割合が高い商売は、それが強みとして読まれる
- 取引先が「口約束」なのか「取引が決まっている」のかは、正直に書く。見込みを確定のように書くと、後で必ず食い違う
3. 資金計画|左と右(=運用と調達)を必ず一致させる
「何にいくら使うか(運用)」と「そのお金をどこから用意するか(調達)」を書きます。左右の合計は必ず一致します。合っていない計画書は、それだけで差し戻されます。
- 使いみちは「設備資金550万円」ではなく、品目・数量・新品か中古かまで明記します。担当者は見積書と突き合わせて確認します
- 運転資金は、仕入・家賃・人件費の費目とそれが何ヶ月分必要かを示します
- 自己資金がいくらあり、それをどう貯めてきたかも見られます。目安は総事業費の1割です(詳しくは沖縄公庫の創業融資の自己資金の章をご参照ください)
4. 損益計画|単なる金額ではなく「根拠」を書く
開業直後と、軌道に乗った時期で分けて考えるのがおすすめです。また、売上ー費用=利益の流れを意識しましょう。
売上や費用など、金額だけ入っていても担当者はその妥当性を確かめようがありません。単価×数量に分解して書けば、その数字が妥当かを検討できます。計画書を作るとは、分解することです。
自家焙煎の豆:2,200円/袋 × 10袋/営業日 × 25営業日/月 = 55万円/月
また、計画書の数字は金額そのものより、ほかの数字との比率で見られます。売上に対する原価の割合(原価率)や、飲食店なら売上に対する食材費+人件費の割合(FLコスト)などです。金融機関は数多くの取引先のデータを持っていて、同業者の比率と突き合わせます。業界の平均的な比率を調べて、そこから外れる部分は理由を説明できるようにしておきましょう。
5. 返済計画|利益で無理なく返せるか
日本公庫の様式には返済計画だけの欄はありませんが、審査で一番重く見られるのは、借りたお金を利益で無理なく返せるかです。
- 年間の返済額と、事業が生む利益を並べて比べる。利益が返済額を下回る計画は通りません
- 返済の元手は、利益に、お金が出ていかない費用である減価償却費を足したもので考えます
- 据置期間(元金を返さず利息だけ払う期間)は、開業直後の負担を軽くする一方、長くするほど後の返済が重くなります
よくある失敗
- 動機が「好きだから」「夢だった」で終わっていて、経験とつながっていない
- 資金計画の左右の合計が合っていない
- 使いみちが大まかで、見積書と突き合わせられない
- 売上が金額だけで、単価と数量の根拠がない
- 原価率や人件費の割合が、業界の相場から大きく外れている
- 利益が返済額を下回っている
- 書いた本人が、計画書の数字を説明できない
日本公庫は、提出前に確認できる「創業計画書セルフチェックリスト」を公開しています。様式にかかわらず、仕上げの確認に使えます。
相談に持っていくときのコツ
- 完成していなくても持っていく:下書きでも計画書があると、相談の中身がぐっと具体的になります
- 担当者に「預ける」つもりで作る:窓口の担当者は融資を決める人ではなく、上司を説得する役目です。担当者がそのまま上司に見せられる資料を渡しましょう
- 追加の資料を求められたら素直に応じる:上の人が気にしているところだと受け止めて、根拠を足していきます
- 公式の手引きで全体像をつかむ:沖縄公庫の創業の手引き(PDF)には、創業の基礎知識、事業計画の立て方、創業準備のチェックポイントがまとまっています。沖縄公庫の各種様式のページにある「創業計画書の作成ポイント解説」の動画とあわせて、相談の前に一度目を通しておくと安心です。沖縄県外で創業する方にも参考になります。
Fintory で作る
Fintory は、ガイドを見ながら創業計画書を作れるツールです。
- 5つのまとまりの順に入力 この記事で紹介した事業・取引・資金・損益・返済の順に、ガイドを見ながら入力できます
- 欄ごとの解説 各欄で「何を書けばいいか」「審査でどう見られるか」の解説が出ます
- 様式に合わせて出力 日本公庫・沖縄公庫・沖縄県信用保証協会の様式に合わせて Excel で出力できます
- 1問1答でも入力 質問に答えていくだけで、計画書の欄が埋まっていきます
まとめ
- 創業計画書は、数字そのものより「根拠を自分で説明できるか」が見られる
- 相談先に定型の様式があるなら、まずそれを使い、独自の資料は補足として添える
- どの様式でも、事業・取引・資金・損益・返済の5つのまとまりで考えると整理できる
- 事業計画では「あなたは誰か」、損益計画では「単価×数量」と「比率」、返済計画では「利益で返せるか」が要
- 下書きでも計画書を持って相談し、担当者が上司を説得できる資料を預ける